覇道ナクシテ、泰平ヲミル@インディペンデントシアター2nd

2014/8/28(木)〜31(日)まで劇団ZTON(ゼットン)による三国志を題材とした「覇道ナクシテ、泰平ヲミル 偽王劉備編/蝕王曹操編」が大阪・日本橋のインディペンデントシアター2nd にて公演された。今回はその感想である。

劇団ZTON/京都の和装エンターテイメント劇団
劇団ZTON エンタメストライク003「覇道ナクシテ、泰平ヲミル」
■in→dependent theatre■2nd


今回は公演初日の8/28(木)に三国志仲間のiru-iruさんと一緒に「蝕王曹操編」を観劇した。劇場内は以下の図の通りで、赤い箇所(黄色はiru-iruさん)に着席し劇を楽しんだ。

曹操編、劉備編の順であらすじを以下に引用する。

【蝕王曹操編】

豫州の曹家・夏侯家は水龍の末裔の一族である。

“炎龍の刻を終わらせるのは、
水龍の一族の務めである”

大陸の混乱を泰平に導くためにと
一族は互いに互いを鼓舞するも、
水龍は、未だ一族の誰の前にも
姿を現さずにいた。

曹家の御曹司、曹操
水龍の助言を欲しながらも
一族の者と共に戦場を駆けるのであった。

魏を勝利へと導く水龍は、
未だその姿を見せず――。

キャスト
曹操孟徳   出田英人
夏侯惇元譲  レストランまさひろ
夏侯淵妙才  高瀬川すてら
郭嘉奉考   門石藤矢

曹騰季興   蜜比呂人

何進遂高   御竹龍雪
袁紹本初   酒井信古
袁術公路   岡本健

張角     上杉逸平

董卓仲穎   平野雅史
呂布奉先   金田進一
 
劉備玄徳   為房大輔
関羽雲長   森孝之
張飛益徳   図書菅

公孫瓚伯圭  佐々木ミツル
趙雲子龍   中山真治

劉弁(少帝) 前田郁恵
劉協(献帝) 中森あやか

典韋     天堂悟志
陳宮     黒木柚真

炎龍  土肥嬌也
土龍  浜崎聡 
黄龍  季楽やな
風龍  鈴木ゆかこ
水龍  …

【偽王劉備編】

炎龍は病に伏せる霊帝に告げる。

”この大陸の混迷を泰平に導く、
炎龍の末裔が幽州にいる”と。

霊帝の子、劉弁はその言葉に従い、
幽州へと足を向ける。
しかし、その道中、劉弁は盗賊に襲撃を受ける。

彼らを襲った人物こそ、
盗賊に身をやつした劉備その人であった。

後に蜀を建国する仁の王、
その徳高き姿を見た者は、誰もいない。

キャスト
劉備玄徳   為房大輔
関羽雲長   森孝之
張飛益徳   図書菅

公孫瓚伯圭  佐々木ミツル
趙雲子龍   中山真治

曹操孟徳   出田英人
夏侯惇元譲  レストランまさひろ
夏侯淵妙才  高瀬川すてら
郭嘉奉考   門石藤矢

曹騰季興   蜜比呂人

何進遂高   御竹龍雪
袁紹本初   酒井信古
袁術公路   岡本健

張角     上杉逸平
 
董卓仲穎   平野雅史
呂布奉先   金田進一

劉宏(霊帝) 大橋正幸
劉弁(少帝) 前田郁恵
劉協(献帝) 中森あやか

典韋     天堂悟志
兵士     江崎拓

炎龍  土肥嬌也
土龍  浜崎聡
黄龍  季楽やな
風龍  鈴木ゆかこ
水龍  …


今回観劇した曹操編の物語のおおまかな流れは次の通りであった。
・官吏による異常な搾取により民(黄巾賊)が蜂起
霊帝の死を隠し、曹騰ら宦官が中央の権力を握ろうとする
・宦官の動きを何進が不審に思うが、霊帝(宦官)の命により黄巾討伐のため益州へ派遣
・黄巾賊の残党が司隷に強襲のために移動
・宦官が全国に義勇軍の募集をかけ劉備曹操公孫瓚董卓が大将軍何進のもとに集結
・黄巾賊を撃退
・黄巾討伐の恩賞として州牧や太守に封じられる
董卓が劉協と共に洛陽入り
曹操の意思の変化、及び天下統一の決意

黄巾の乱献帝奉戴までを、五行思想やそれに龍を絡めた人物設定、また瞬きするのもはばかれるほどのスピードと迫力ある殺陣。それらオリジナル要素が、矛盾や設定の崩壊が起こらず、三国志と巧く合わさり「新たな三国志物語」ができていた。そのため、こういう発想もできるのか…と終始感心し続けていた。関羽張飛が「愛の力」で戦ったり、夏侯惇夏侯淵曹操よりもしっかりした性格で、曹操の面倒をみたり、人の言うことを疑いを抱かず素直に受けて入れてしまう呂布など、人物の設定も非常に面白かった。また95分の公演であったが、物語の緩急や起承転結がしっかりと構成されており、見応えがある殺陣が随所に披露されており、飽きることなく最後まで集中して楽しめた。

三国志といえば「正史・演義問題」が挙げられるが、それらを考えずに観ると、より一層楽しめる内容であった。舞台となった当時の情勢や、人物関係がしっかりとフォローされていたため、三国志について詳しくない方でも楽しめる内容だと感じました。ただ五行思想後漢以前の人物(始皇帝劉邦など)が言及されるため、中国史について疎い方だと少し理解することが難しいような気がした。

この公演でを通して印象が大きく変わった人物がいる。何進である。正史や演義、また小説や漫画等で描かれる「成行上で出世した無知な肉屋」として描かれるため、印象があまりよろしくない(どちらも言うことを一切聞かず、勝手に突っ込んでいき自爆する)が、ZTON版「何進」は漢室に対し忠義が厚く、武勇に優れ、さらに袁紹袁術を従わせる優れた大将軍として演じられていた。また自信に満ち溢れる有能な忠臣だったため、何進史上最高の何進だった。本編の主人公は曹操だが、それ以上に何進が重要な役割を担っていた。

終演後は劇場入口ホールにて出演者さんたちが出てこられて、物販やお客さん、知人に挨拶されておられた。この際に何進を客演された御竹龍雪さんに「龍雪さんの何進将軍はかっこよく、好きになった。」という旨の感想をお伝えし、撮影のお願いをすると快諾してくださった。
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これまでお芝居を観たことがなかったが、今回初めて観劇して、その場でしか味わうことができない雰囲気や映像では伝わらない迫力が魅力的だった。関西では三国志を題材にした公演がほとんど行われないため、次回は年明けに公が演予定されているOffice ENDLESSの「RE-INCARNATION」を、2015年3月に予定されている劇団ZTONによる次回公演「御伽の鬼、現世の人
(仮)」を観に行きたいと考える。


インディペンデントシアター2nd