劉玄紱破黄巾賊

劉玄徳 黄巾の賊を破る

玄徳は五百余騎にて大奥山の麓まで攻め寄するに、賊の副将蠟茂と云う者打ち出でければ、張飛丈八の矛を提げ是れと渡り合い、只一合に馬より下へ突き落としければ、大将軍程遠志大いに怒り、馬を飛ばして打ってかかる。関羽側より跳り出で、八十二斤の青龍刀を回して、只一刀に斬り落とす。賊軍大将を打たれて皆降参をぞなしければ、軍兵を一纏めになし、劉龔を救わんと青州さして発向し、賊軍を掛け破り廣宗に至り、盧植が勢に加わりければ、玄徳を重く用い皇甫嵩「朱雋の軍を救うべし」と命じける故、直に朱雋が陣に至りければ大いに喜び、玄徳を先陣となし羊猪の血、其の外、穢れたるものをそそぎて賊の妖術をてしぎ、遂に張宝が首を切りたり。玄徳は中山府安喜縣の尉となり、能く民をあわれみけり。然るに督郵と云う吟味役来るに、玄徳賄賂を与えざりしかば、散々に無礼を働きしを張飛怒りて柳の樹へ縛り付け、之を殺さんとなしたるを、玄徳をし止め、遂に己が官職の印綬を督郵が首にかけ、涿郡の家族をまとめて代州の劉恢が方へ行きたりけり。

劉玄紱破黄巾賊

玄紱ハ五百余騎尓て大奥山の麓迠攻寄春る尓、賊の副将蠟茂と云者打出け連ばバ、張飛丈八の矛を提げ是と渡合、只一合尓馬より下へ突落し連バ、大将軍程遠志大尓怒、馬を飛して打てかゝる。関羽側より跳出、八十二斤の青龍刀を回して、只一刀尓截落春。賊軍大将を打連て皆降参をぞなしけれバ、軍兵を一纏尓なし、刘龔を救ハんと青州さして発向し、賊軍を掛破り廣宗に至り、盧植が勢尓加りけ連バ、玄紱を重く用皇甫嵩朱雋の軍を救ふべしと命じける故、直尓朱雋が陣尓至りけ連バ大尓喜び、玄紱を先陣となし羊猪の血、其外、穢多るものを洒て賊の妖術をてしぎ、遂尓張宝が首を切多り。玄紱ハ中山府安喜縣の尉となり、能民をあハ連ミけり。然尓督郵と云吟味役来尓、玄紱賄賂を與へざりしかバ、散々に無礼を働しを張飛怒りて柳の樹へ縛付、之を殺さんとなし多るを、玄紱をし止め、遂尓己が官職の印綬を督郵が首にかけ、涿郡の家族をまとめ天代州の刘恢が方へ行多りけ里。