玄紱三訪草蘆

玄徳 三たび草蘆を訪れる

玄徳は司馬徽に別れ新野の城に帰りけるが、劉表襄陽のことをききて嫡子劉蒅をかって詫謝につかわしける。玄徳は此の程より単福といえる道士、穎上の徐庶を得て軍師となし、度々曹仁が大軍を掛け破りけるまえ、曹仁、程碰と相談して曹操に進め、徐庶が母を捉えて徐庶を呼び寄せければ、玄徳大いひになげき別れをおしみける。去るほどに、玄徳は徐庶の別れがけ教えくれける襄陽の臥竜岡に住む臥竜先生、諸葛亮字は孔明をたずねんと、関羽張飛をともない二度まで訪ずれ玉ひしに、いつも孔明不在にて会わざれば、書簡をのこして還りける。明ければ建安十三年、又そろそろ雪吹風をもいとわず、孔明が庵を訪い玉へば、孔明は寝台の上に安臥してありければ、玄徳階下に立て二時ばかり待ち玉ふ。孔明睡り覚めて、不礼謝し、奥座へ請しける。玄徳、孔明の姿をみ玉ふに、身の丈八尺、面は冠玉のごとく、頭に綸巾をいただき、身に鶴氅を被り、胸には天地の機を蔵し■つふ当世の神仙なれば心を■ひに喜び、孔明辞すれども、しいて車を同じうし新野へぞ連れ帰りける。

玄紱三訪草蘆

玄紱ハ司馬徽尓別連新野の城尓帰りけるか、刘表襄陽のことをきゝて嫡子刘蒅をかつて詫謝尓つかハしける。玄紱ハ此程より単福といへる道士穎上の徐庶を得て軍師となし、度々曹仁が大軍を掛け破りける満え、曹仁程碰と相談して曹操尓進め、徐庶が母を捉へて徐庶を呼寄け連バ、玄紱大ひ尓なげき別連をおしミける。去る不ど尓玄紱ハ、徐庶の別連がけ?へ呉ける襄陽の臥竜岡尓住む臥竜先生、諸葛亮字ハ孔明を多づねんと、関羽張飛をともない二度迠訪づ連玉ひし尓、いつも孔明不在尓て會ざれハ、書簡をのこして還りける。明連バ建安十三年、又そろ雪吹風をもいと王春、孔明が庵を訪ひ玉へバ、孔明ハ寝臺の上尓安臥してありけ連バ、玄紱階下尓立て二時者かり待玉ふ。孔明睡り覚て、不礼謝し、奥座へ請しける。玄紱、孔明の姿をミ玉ふ尓、身の丈八尺、面ハ冠玉のごとく、頭尓綸巾をい多ゞき、身尓鶴氅を被、胸尓ハ天地の機を蔵し■つふ当世の神仙なれバ心を■ひ尓喜び、孔明辞春れども、志ひて車を同じうし新野へぞ連帰りける。