『快楽天BEAST』2017年3月号入手

先に断っておくが、本書は成年向けの漫画雜誌である。

2017年2月14日(火)にワニブックスより『快楽天BEAST』が480円(税込み)で発売された。この雑誌では火鳥さんによる1話完結型の歴史漫画『快楽ヒストリエ』が連載されている。以下にいくつかツイートを挙げるが、これまで古代ギリシアにローマ、日本史等々をモチーフにした漫画が描かれていた。そして今月号(P.325〜334)でついに待望の三国志回が掲載となったため早速入手した。

快楽天ビースト 3月号|ワニマガジン社
https://www.wani.com/13835/

物語は桃園結義後、劉備関羽張飛の3人が黄巾討伐に向かうが、程遠志や訒茂と戦うのではなく、張角とエンカウントしてしまい対峙する、という話である。三国志をユニークな解釈によって描かれているため非常に面白い。

この作品を読んでふと気になる描写がいくつもあったが、ネタバレを避けるため詳細は記さずそのうちの1つを紹介をしたい。

張飛の額の装飾
池田東籬亭 校正,葛飾戴斗 画『絵本通俗三国志』や横山『三国志』等、多くの作品で目にする機会がある緊箍児。「孫悟空の頭にはめられている金の輪っか」と言えば分かりやすいだろうか。三国志作品が多く溢れかえっている今日では、正史ベースという圧力(マウンティングして殴る人)によってすっかり描かれなくなってしまったこのアイテムが、本作に登場する張飛が身につけていた。これは非常にレアな演出となっている(ように感じた)。作者の火鳥さんは横山『三国志』の影響を受けていらっしゃるのだろうか…

張飛の装飾品の変遷については清岡美津夫(2015)「横山光輝はなぜ官渡の戦いを描かなかったのか」(『三國志研究』第十号,p.117-137に詳しい。
横山光輝はなぜ官渡の戦いを描かなかったのか | 中国・アジア研究論文データベース
https://www.spc.jst.go.jp/cad/literatures/2351

三国志を題材にした漫画作品の連載が一時期と比べ、今は格段に少なくなってしまっているので、この作品のように独自の解釈が展開された三国志作品も含めて1つでも多く登場して欲しい。

【追記:2月28日(火)】
Adobe Flash Playerに非対応の端末があることから、上に紹介したデータベースにて論文が読めない場合が多いようなので、便宜的に参考飼料として挙げられている画像資料と、現在の三国志作品で描かれる張飛の画像を比較のため以下に掲載する。


左よりKOEI「三國志12」、王欣太,李學仁『蒼天航路』、そしてCygames「三国志パズル大戦」の張飛である。

かつては緊箍児をつけていることが多かったが、歴史的考証によって今ではすっかり幘(頭巾のようなもの)がかぶせられている。幘の装飾として額あてのようなモノがあしらわれているが、緊箍児を意識したようなデザインはほぼ皆無である。

大変光栄なことに、作者の火鳥さんにこのページを読んでいただけた。そして火鳥さんが投稿されたツイートにて、緊箍児に関して言及してくださった。

やはり横山『三国志』の張飛を意識して描かれたそうである。緊箍児は張飛を表す記号であると同時に、これを描けば作中で「この人物は張飛ですよ」等といった説明が省くことが可能となる。当然のことながら漫画にも紙幅に制限があるため、このニクい演出は確かに合理的だ。