横山『三国志』連載開始45周年、川本喜八郎人形劇美術館10周年、そして魯粛没年1800年(あと賈充生誕1800年)を記念し「三国志 桃園のつどい−魯粛子敬没後1800年−」がイベントハウス東京カルチャーカルチャーにて開催された。
11時開場、12時開宴と設定されていたため「甘寧1番乗り!」を目指し、10時45分に開場前へ到着した。しかしながら開場前には既にお二人がいらっしゃった。次々に知った面々も次々と到着され、開場前にもかかわらずちょっとした行列となった。
スタッフの方に誘導され、少し開けたスペースへ移動することに。11時になるとチケット番号の順に5名ずつ開場へ吸い込まれていった。席は全て自由席となっており、各々好きなポジションを確保されていた。今回は「三国志フェス2015−水魚の交わり−」以来、約2年振りにお会いした新倉さん、にゃもさんとステージ前のテーブルを囲み、しばらく積もる話(お互いの近況報国や賈鵬芳「三国志組曲」のCD発売とコンサートの開催、IRONATTACK!「鉄撃三國志」のCD発売、三国志演義について詳細に解説した袴田 郁一『マンガでわかる三国志』の発売など)に花を咲かせた。
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三国志組曲 第二番 ~二胡とシンフォニック・オーケストラで語る将軍伝説~
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開場後もぞくぞくと全国各地の三国志ファンの方々が集まり計百数十人以上、当日券は僅かしか残らないほどの盛況ぶりであった。10年以上前の三国志関連のイベントや講座では、40代以上の男性の参加者が多かったが、開場を見渡すと女性が半数以上を占めており、若い方もかなりいらっしゃっていた。やはり真・三國無双シリーズの影響によるものではないかと3人で2010年代の三国志の受容について述べ合った。
このイベントの運営に携わり、いつもお世話になっている方々が会場内に見えたため、席を離れ挨拶を行う。関東勢の方とよくお会いする機会があるものの、前述した三国志フェス2014以降お会い出来ていない方が多いことを再認識させられた。席に戻ると、渡邉先生と仙石先生が座られており、おそれ多いことにあの先生方と同じテーブルを囲み「桃園のつどい」を楽しむこととなった。
さて、イベントのタイムスケジュールは以下の通りとなっていた。
11:00-11:50
- 会場
11:50-12:00
- 開会式
12:00-12:25
- ラジオ Cha-ngokushi (ちゃんごくし) in Shibuya
12:30-13:30
休憩
13:40-14:40
14:45-15:00
- 三国志 爆笑 回文ライブ
- 閉会式
三国志にちなんだフード・ドリンクも提供されており、上記プログラムだけではなく飲食でも三国志を楽しめるようになっていた。
メニューはひでっぷさん(@JohnnyHidepp)が手がけられた
開宴時間。東々さん(@do_ng2)がステージに登壇され、人形劇「三国志」のED曲「三国志ラヴ・テーマ」を大熱唱。ついに待ちに待ったイベントが開宴となった。
まずは三国志のまち・神戸新長田発祥のWebラジオ「ラジオCha-ngokushi in Shibuya」。ステージにむらやさん(@muraya23)も登場し、東々さんとともに自己紹介も兼ねて番組紹介を話される。その途中に、お店の都合で参加することができなかったCha-ngokushi店長のあきよんさん(@akiyon8)からのビデオメッセージが流された。メッセージの終盤では横山『三国志』の後期の姜維の恰好をされており、会場がますます盛り上がった。
・Cha-ngokushi(ちゃんごくし) - ホーム | Facebook
https://ja-jp.facebook.com/changokushi/
このビデオを撮影される直前までお店にお邪魔していたため、なりきり隊の恰好をして撮影準備をされていたが、横山姜維の恰好をされていたためかなり驚かされた。
そしてスペシャルゲストとして渡邉義浩先生が登場。5月1日(月)よりNHKにて放送される「100分 de 名著」と、そのテキストの話題が話題の中心となった。
・名著65 「三国志」:100分 de 名著
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/65_sangokushi/index.html#box01
・100分de名著 陳寿『三国志』 2017年5月 | NHK出版
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062230742017.html
次は横山『三国志』連載開始45周年を記念したトークショー。レキシズルの渡部麗さん(@rekisizzle)とタイガー原さん(@TIGERHARA)が登壇され、続いて横山光輝先生の担当編集者であった岡谷信明さん、そして再び渡邉先生が登場された。トークショーでは「魯粛」と「横山光輝」をピックアップし、渡部・タイガー原両氏による横山『三国志』における魯粛像と、渡邉先生による史実の魯粛像の紹介が行われた。特に印象深かった話題は『大判三国志』の劉備に強いカリスマ性を感じたため、従来の劉備と見比べると目のハイライトが増えていた、という報告であった。大判でも加筆修正が施されているとは予想していたが、細部にも手を加えられていることを知り、大判を単行本や文庫本と比較する楽しみが増えたのは非常に嬉しい情報だ。
トークが盛り上がるうちに意図してなのかは不明であるが『三国志演義』(横山『三国志』)対『正史』という対立構造が作り上げられ、渡邉先生が雑劇でいう「丑」のような扱いとなってしまった。せっかくこのような場で、魯粛に焦点を当て解説をするのであれば、渡邉先生に彼をより深く掘り下げてお話をして頂きたかった。
後者では岡谷さんによる横山先生の数々のエピソードが紹介された。実際に剣閣へ行き道中崖を降りるも登るのに苦労した、横山先生は原稿の締め切りをしっかりと守る、横山先生とカジノへ行き先生が勝ちまくったが帰りに空港で税関に引っかかった、先生は勝負師で「28」がラッキーナンバー、曹操の細い眉は他の人物の眉とは異なり特別であった、女性の眉はアシスタントに任せず自分で描いた、女性は『魔法使いサリー』のような少女漫画のタッチで描いた、手塚治虫に認めらておりアドバイスを受けた等々…仕事に関することだけでなくプライベートのことまで多岐にわたる話題が飛び出た。岡谷さんのお話を通して多くの方が「横山光輝」という人物の豪快さと偉大さを実感したのではないだろうか。
ひらさん(@hira282828)によると、『コミックトム』のトム・インタビューにおいて手塚治虫のインタビュー記事に、アドバイスに関する話が掲載されていたそうだ。
桃園の集いで潮出版の岡谷さんが、「もっとオリジナルキャラを出した方が面白くなる」との手塚先生のアドバイスを、横山先生がスルーしたとのエピソードを紹介したようですが、その件はこのインタビューの中でも語られています。なかなか興味深い話ですね。 pic.twitter.com/RCVyFs8f2q
— ひら (@hira282828) 2017年5月1日
小休憩を挟み、いよいよ今回の目玉「人形が動く!人形劇三国志トークショー」が始まった。進行は哲舟さん(@Tetsu_uenaga)が務められ、人形操演者の船塚洋子さん(@d3_yu)と関羽人形、仙石知子先生、そして三度目の登壇となる渡邊先生が登場された。人形は三本のピアノ線を右手で操ることによって動かす、人形劇では声優さんが先に声を入れ、その音源を操者が聞いて情景や心情をイメージし、また間合いを覚え撮影をすると船塚さんがお話をされた。また桃園の誓いの場面では人形を全く見ずに撮影に挑んだ、人形劇で初めてミニクレーンを用いて俯瞰した構図での撮影を行った、赤壁の戦いの場面では本物の火と水、舟に扇風機を使い、実際に人形を一体燃やした。人形の大敵である「水」を五丈原の戦いの場面において雨の演出のため諸葛亮にふりかけたなど現場でのお話がされた。とある限られた場面だけを撮影するためだけに作成された頭を監督が気に入ってしまい、当初予定していたよりも長いカットで用いられたという話は微笑ましかった。
これまでブラウン管や液晶画面を通してでしか見たことがなかったあの関羽人形の実演される時を迎えた。当時の音源が使用できなかったそうで、爆烈Qさんの声に合わせてまるで生きた人のように関羽人形が動く。操者によって人形に魂が宿った瞬間は非常に感慨深いものであった。今後見ることができないであろう。
諸事情から声をあてさせて頂くということになったんですが本当に興奮しました。短文でしたし拙い演義、いや演技でしたが、船塚さんの操演のお力、川本先生の人形のお力、そして当時のイメージにお手伝い頂きまして、なんや感涙しましたて方もいらっしゃったらしく本望も本望でした。感謝過ぎる! pic.twitter.com/W12tKzOJ3M
— 爆烈Q(高見つかさ) (@bakuretsukasa) 2017年4月30日
最後を飾るのは、シンガーソングライターの手賀沼ジュンさんによる「三国志 爆笑 回文ライブ」。『欧陽菲菲 変換できない』『回文演歌』『回文演歌(ver.三国志)』の三曲が披露された。1曲目の『変換できない』は三国志ファンなら誰もが経験したことのある内容であったため、強く共感した。3曲目の三国志の人物を歌詞に用いた『回文演歌』。「インテリ典韋」「孫策 吐く 酸素」「だめ…呂布、寄り目だ」といった破壊力抜群のフレーズで、会場のボルテージがますます高まった。
閉会式。出演者全員がひとことずつコメントや感想を述べられ、会場の熱が冷めぬままイベントが終了となった。今回は三国志ビギナーからコアなファンまで幅広く楽しめる内容であった。特に今回のテーマでもあった横山『三国志』や人形劇『三国志』の知識があるとさらに楽しめるものであった。多種多様な作品を通して我々を魅了させる三国志は本当に奥が深いことを改めて実感した。
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷1丁目23-16 cocoti SHIBUYA
イベント後、渡邉先生、仙石先生、竹内先生、にゃもさん、そして新倉さんと二次会でご一緒することに。ここでは人形劇「三国志」を分析し、どのような影響をもたらしたのか、また吉川・横山『三国志』ができなかった「三国志の日本化」など意見交換を行う。今回はかなり有意義で濃厚な時間を送ることができた。