「能の花 能を彩る花」公演(2017年10月28日)

先日より能楽関連の記事が立て続けとなっているが…

2017年10月28日(土)14時より、横浜市西区に所在する横浜能楽堂にて横浜能楽堂企画公演「能の花 能を彩る花」が催される。第1回目の公演のテーマが「菊」ということで、「菊慈童 酈縣山」(観世流)が上演される。料金はS席が7000円、A席が6000円、B席が5000円で全席指定となっている。

横浜能楽堂|公演・催事 | 能の花 能を彩る花 第1回「菊」
http://ynt.yafjp.org/schedule/?p=2144

上記サイトより、この企画公演の主旨を以下に引用する。

2017年は、華道・池坊の開祖と呼ばれる池坊専慶がいけばなの名手として文献に登場してから555年に当たります。これを記念し、花に関係する5つの能を上演し、次期家元の池坊専好が舞台を花で彩ります。「花」という共通のキーワードを持つ近しい存在でありながらその交流が限られてきた「能」と「いけばな」。両者が競演し、新たな「花」を創造します。

つまり555年を記念して花に関する演目を5つ上演するそうだ。まさに「5」尽くしである。

さて「菊慈童」の概要は次の通りである。また出演者とその役も以下に挙げておく。

概要

中国 魏の文帝の時代。西の奥地・酈縣山の麓から薬の水が湧き出たとの報せを受けた帝は、勅使(ワキ・ワキツレ)を派遣する。勅使が山中に至ると、そこには一軒の庵があり、中に一人の童子(シテ)が住んでいた。人里遠く離れた深山幽谷に住むこの童子を見て勅使が訝いぶかしむと、童子は、周の穆王に仕えていた「慈童」という名の童子だと名乗る。穆王といえば七百年も昔の人。驚く勅使に、慈童は証拠として、王から賜った枕を見せる。枕には、法華経の妙文が書き添えられていた。この妙文を菊の葉に書き写したところ、滴る雫が不老不死の霊薬と変じたのであった。慈童は、この薬の酒を讃美し、帝の長寿を言祝で舞い戯れると、ほろ酔い気分で仙家へと帰ってゆくのだった。

シテ(慈童)梅若 玄祥
ワキ(魏の文帝の臣下)森  常好
ワキツレ(周の穆王の官人)森 常太郎
ワキツレ(輿舁)郄井 松男
ワキツレ(輿舁)梅村 昌功
ワキツレ(魏の文帝の臣下)則久 英志
アイ(菊花の精)石田 幸雄
笛 :一噌 隆之
小鼓:鵜澤洋太郎
大鼓:安福 光雄
太鼓:大川 典良
後見:梅若長左衛門  山崎 正道  小田切康陽
地謡:梅若 紀彰  松山 隆雄
   角当 直隆  松山 隆之
   川口 晃平  内藤 幸雄
   河本  望  梅若雄一郎

伝統芸能に取り込まれている三国志を題材にした演目と言えば、成田屋歌舞伎十八番「閏月仁景清(関羽)」や浄瑠璃諸葛孔明鼎軍談」が広く知られているであろう。
これらはなかなか観ることができない演目である。この「菊慈童」も同様にあまり上演されないため、今回は是非ともない機会である。


【追記:2017年12月21日(木)】
能に関する様々な情報を掲載するポータルサイト「the能ドットコム」にて、以下のツイートにもあるように枕慈童(菊慈童)の演目事典の項に、この演目のストーリーの現代語訳、あらすじ、みどころなどをまとめたPDF(478KB)が公開された。今回は以下にリンクのみを挙げておきたい。

・能・演目事典:枕慈童:あらすじ・みどころ
http://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_085.html