京劇三国志「趙雲と関羽」@NHK大阪ホール

日中平和友好条約締結35周年を記念し、5/25(土)から6/2(土)までの2週間、中国唯一の国立京劇団「中国国家京劇院」が来日し東京、愛知、大阪の順で京劇三国志趙雲関羽」という題目で公演を行わていた。大阪では6/8(土)にNHK大阪ホールにて開催され、今回は16時からの部(千秋楽)を観覧した。座席は1階C列の30番目(図)の席であったが、目線は舞台と同じ高さであったため、とても見やすい席が取れた事に満足であった。

京劇三国志「趙雲と関羽」
NHK大阪ホール

京劇に対し敷居が高いという概念があるためか、周囲は自分よりもお年を召された方が多く、男性が多かったのが印象的であった。また隣の御婦人と仲良くさせて頂いたが、彼女の話によると、京劇は初めてで三国志の知識はないが、死ぬまでに一度は観てみたかったとのこと。また旦那さんが三国志が好きなため、その事もあり今回一緒に観に来たという。

物語は、長坂坡の戦い〜漢津口まで(三国志演義では第41回:劉玄紱攜民渡江,趙子龍單騎救主 、42回:張翼紱大鬧長板橋,劉豫州敗走漢津)についてを、演義をベースにし、民間伝承や雑劇などで伝わっている話を少し盛り込んだ内容であった。劇中に登場する人物は以下の通りである。

劉備軍】
趙雲子龍
関羽雲長
張飛翼徳
劉備玄徳
麋竺子仲
麋芳子方
・麋夫人
・甘夫人
・簡雍憲和
・馬丁(赤兎馬)
荊州民(複数)

曹操軍】
曹操孟徳
夏侯惇元譲
曹洪子廉
張遼文遠
許褚仲康
・李典曼成
楽進文謙
張郃儁乂
・文聘仲業
徐庶元直
・夏侯恩
・夏侯傑

【第一幕】「長坂坡の戦い」について
上にも記したが、演義がベースになっているため、大まかな見当は付くかと思うが、この幕では趙雲が活躍をする。しかも演義以上に。大まかに流れを記述すると、
趙雲vs八将軍
劉備本軍と離散する。
③簡雍を救援し劉備の下へ逃がす。
④敵将を斬り捕縛されていた麋竺を救助。
④甘夫人も救援し、麋竺劉備の下へ届ける。
⑤夏侯恩を斬り、青詇の剣を入手。
⑥古井戸に麋夫人が身を投げたため、それを埋める。
趙雲(+阿斗)in落とし穴vs八将軍
⑧後を劉備の下へ届ける。

趙雲vs八将軍(夏侯惇曹洪張遼許褚、李典、楽進張遼、文聘)という場面が2度もあり、趙雲は無傷で毎回彼らを退けるのである。2度目は阿斗を懐に抱え、落とし穴にハマった状態で戦うが、見事に撃退をする。果たして八将軍は強いのか、と疑念を抱いてしまうが、演義補正された趙雲が相手なので仕方がないだろう。また何故か張郃が八将軍のリーダー的振る舞いを行なっていたのが、唯一そこが気になる点だった。
劉備は阿斗を地面に叩きつけなかった。

【第二幕】「漢津口」について
漢津では関羽が主役である。煌びやかに装飾された偃月刀を、重々しく振り回し、その都度見栄を切る。本来は関羽に注目をするべきであろうが、馬丁(赤兎馬)につい視線が移ってしまう。趙雲以上にアクロバティックに舞台上を側転やバク宙を披露するため、関羽よりも眼が離せなくなってしまった。
趙永偉さんが主役の趙雲関羽を一人で二役演じ、趙雲ではスピードのある軽快さ、関羽では重量のある動作や立ち回り。まるで別人が演じているのではないかと、疑ってしまうほど、全く異なり、比較し楽しむことが出来た。

【全体を通して】
京劇では車輪の描かれた車旗によって車に乗っている、と表現したりと椅子を井戸に見せたり、と最小限の小道具で様々なものを表現している事に感心した。特に房の付いた棒(馬鞭)を振りながら歩くことにより、それを持っている人物が馬に乗っていることを表現していると知った。以前、初めて観た赤壁の戦いでは、知識がなかったため、何となく観て楽しんでいたが、京劇は本当に奥が深い。それ故、今後も京劇を観て、何をどの様に表現しているか注目していきたいと考える。

最後に印象深い場面の台詞を記して、今回のレポートを終わりとする。

夏侯恩
「我は曹丞相の家臣、背剣大将軍夏侯恩なり。陣中で兵書を読んでいたら、突然斥候が報告に来て、両軍の前線に常山の趙子龍が現れたと言う。若くて力もあり、血気盛ん。姿は凛々しく誰もかなわぬ様子。それを聞いて私は、ありったけの武器で身を固めた。前線に赴き、趙雲を生け捕ってやる。趙雲をいつ捉えるか…今でしょ!!」