厳島神社/豊国神社(千畳閣)(2)

以下の記事の続き。

 

関羽周倉図」

絵馬の大きさは縦およそ2m、横およそ1m。関羽周倉の2人の姿を描く。彼らの像容は、関羽は緑の幘を被り赤系が基調とした戦袍に身を包む。左手に持つ『春秋』を座りながら読んでおり、右手は右腹部あたりで袍をわずかにたくし上げる。関羽は幘・袍ともに緑色で表さることがほぼほぼであるが、なぜかこの絵馬は赤で表される。

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一方、そのそばに侍る周倉は、お馴染みの笠形盔を被り両手で青龍刀を抱く。関羽と同様に赤系が基調の袍を纏う。両者ともに色彩が退色しているため、元来の色彩は不明である。

 絵馬上部の中央よりやや左に「威霊■美照■■■■/■■■髯絶倫/■■■■■■■/■■■■■/■■■■■」と銘が記されているが、そのほとんどが擦れて判別が出来ず。また右下には「願主■眞與」と墨書で記される。額には奉納年などの記述はない。

豊国神社の一部の関係者のうち、この絵馬を「天書を読む宋江」と認識されているようである。なぜ『水滸伝』の宋江と認識されているのか、その理由は不明である

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劉備躍馬跳檀渓図」

縦およそ1m、横およそ1.8m。モチーフは『演義』第34回「玄徳躍馬跳檀渓」。これまで言及した絵馬3点と比べると状態は非常に良好で、退色や破損などはほとんど見受けられない。赤い袍に身を纏い右手には鞭を握り、左手で手綱を操る劉備が、壇渓の急流を黒い的盧に跨り越える場面が描かれる。

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右上には「平安/楠亭」の墨書と落款が見える。楠亭とは西村楠亭(1755~1834)の号で、彼は円山応挙の門人で江戸時代後期に活躍した絵師である。

額には奉納年などの記述は見えないが『厳島絵馬鑑』 に拠ると、文化八年(1811)十一月に楠亭が描き、その後に京都宮島講中講元の若狭屋七兵衛により奉納されたようである。題は「玄徳之圖」。かつては厳島神社の西回廊に南向きで掲げられていたようである。

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