礒野信春『長崎土産』(1847年)

『長崎土産』は磯野信春が長崎に関する図録を中心に絵とともに記した地誌である。弘化四年(1847)正月に成立した。諏訪神社眼鏡橋などの名勝や、オランダ正月などの風俗も取り上げられている。内容の多くは当時長崎に点在していた唐館や蘭館、唐寺、唐船、蘭船など、当時貿易していた国に関するモノで占められている。

この『長崎土産』はNDLのデジタルアーカイブにて閲覧することができる。

国立国会図書館デジタルコレクション - 長崎土産
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536303

今回は『長崎土産』に見える三唐寺関帝堂の記述を以下に引用する。なお変体仮名は平仮名に直した他、適宜句読点を補った。

唐寺
唐寺興福寺東名山と号す。元和九癸亥年*1建つ。開山唐僧眞圓にして南京寺なり崇福寺聖寿山と号す。寛永巳六己巳年*2建つ。開山唐僧超然。福州寺なり、福濟寺分紫山と号す。寛永五戌辰年*3建つ。開山唐僧覚海。漳州寺なり之三箇寺なり。

関帝
関帝蜀漢関羽字は雲長なり。もろこし元明以来、代々殊に尊び奉じて州縣ごとに皆其祠廟有て、普くこれを祀り関聖帝君と称す。唐三ヶ寺、皆奉祀せり。

また廿一〜廿二に掲載されている「唐寺」図では崇福寺が描かれている。右ページの大釜が置かれている建物の奥に、崇福寺関帝堂が確認できる。この関帝堂にはシーボルトが見た関帝像が安置されていたのだろうか。それとも現在護法堂の関帝像が置かれていたのだろうか。

*1:1623年

*2:1629年

*3:1628年