榛名神社

群馬県内に見える「三国志」を巡った「第2回 北関東三国志ツアー」を2019年7月28日(日)に敢行した。そのレポートをいくつかの頁に分けて記したい。ツアーの概要については以下のまとめを参照されたい。

 

第2回北関東三国志ツアー - Togetter

 

「北関東三国志ツアー」1ヶ所目。

 

赤城山妙義山とともに「上毛三山」の1つに数えられ、古くより山岳信仰を受けてきた榛名山群馬県高崎市)。その榛名山の南中腹に位置するのが榛名神社である。創建は6世紀末と伝えられ、火産霊神と埴山毘売神を祀る。

 

榛名神社公式サイト|榛名神社へようこそ

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榛名神社山門

 

榛名神社の境内は榛名川に沿って南北におよそ500メートルにわたって、山門や三重塔、社、堂などの多くの建物や、神楽殿そして社殿を有する。

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榛名神社の「三国志」は本殿の少し手前に位置する「双龍門」に見える。榛名神社の由緒および、双龍門の概要は次の通りである。

当社は第三十一代用明天皇丙午元年(一三〇〇余年前)の創祀で延喜式内社である。徳川時代の末期に至る迄神仏習合の時代が続き満行宮榛名寺などと称され画て上野寛永寺に属し、明治初年神仏分離の改革によって榛名神社として独立した。

 

双龍門

竣工は安政二年(一八五五)。間口十尺、奥行九尺。総欅造。四枚の扉にはそれぞれ丸く文様化された龍の彫刻が施されていることから双龍門と呼ばれるようになった。羽目板の両面には「三国志」にちなんだ絵が彫られており、天井の上り龍、下り龍とともに双龍門の風格を高めている。棟梁群馬郡富岡村清水和泉、彫刻武蔵熊谷宿長谷川源太郎*1、天井の龍は高崎藩士矢島群芳の筆。

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この双龍門は北東から南西に構える入母屋造りの四脚門で、控柱~門柱、門柱~控柱の羽目板に2枚1組の彫刻が施されている。北西部外側には「桃園結義」(左:天を仰ぐ劉備、右:関羽張飛)、内側には「三顧茅廬」(左:劉備と彼を迎える童子諸葛亮、右:関羽張飛)が、また南東部外側は「趙雲救幼主」(左:趙雲を追う曹操軍、右:劉禅を抱く趙雲)、内側には「張飛大鬧長坂橋」(左:大喝する張飛、右:逃げる曹操軍)をそれぞれ配する。

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天を仰ぐ劉備劉備を見る関羽張飛

 

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長坂橋にて大喝する張飛とその表情

 

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劉禅を抱き単騎駆けする趙雲

 

これらの彫刻はいずれも地上から150cm以上の高さに位置している。かつては彩色がされていたと思われるが、経年のためかほとんどの塗料が剥落しまっており、例えば人物の目など部分的に当時の色が残っている。また双龍門自体が本殿へ通じる参道上にあるため、年間を通して非常に多くの参拝者が間近くを通行する。文化財保護の観点からかは不明であるが、彫刻を保護するように目の細かい金網で覆われている。そのため撮影しようにもピントが彫刻ではなく、金網にあってしまいデジカメでは綺麗に写真を撮ることができなかった。幸いなことにスマートフォンのレンズが金網よりも小さかったため、接写することで細部を撮影することが叶った。文明の利器と技術の素晴らしさと恩恵をここで改めて痛感した。

 

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撮影時の様子

 

これらの彫刻を有する双龍門は先述したように、熊谷出身の彫刻師・長谷川源太郎(一般に熊谷源太郎と呼ばれる)の作である。彼は47歳の時に熊谷から越後へ拠点を移すが、「越後のミケランジェロ」と称される石川雲蝶と並び、社寺彫刻の名手として新潟でも高く評価されたそうである。長谷川源太郎の作品と伝えられているものは、この双龍門のほかに曹洞宗赤城山 西福寺(新潟県伊米ヶ崎町)や上野国総社神社(群馬県前橋市元総社町)、御島石部神社(新潟県柏崎市西山町)などの寺社において、今日でも彼の彫刻を見ることが出来る。

 

少しハプニングもあったが、30分以上もの時間をかけて双龍門の彫刻をゆっくりと鑑賞することができた。そこを行き交う参拝者の方々から、かなり痛い視線が肌に刺さりまくっていたと感じるほど、間違いなく「不審者」をしていたと思う。

細部まで丁寧に作りこまれているこれほど大きな彫刻を間近で見れる機会はほとんどない。加えて題材が三国志ということもあり、三国志が好きな方にとってはたまらない隠れた三国志スポットだと思う。

 

榛名神社は2017年より本殿をはじめとする社殿の修復工事が現在行われており、2020年は双龍門の修復工事が着手が計画される。来年はこれらの彫刻を鑑賞することができなくなるため、もし行こうと考えられている方は注意していただきたい。

 

〒370-3341 群馬県高崎市榛名山町849

*1:1799~1861