『封神演義』の剪瓷雕

封神演義』ファン必見!

 

今回は4年前の記事の続きです。

横浜「関帝廟」の牌楼には様々な剪瓷雕(せんじちょう)と呼ばれる装飾が施されており、上の記事にて『三国志演義』より「関羽千里行」と、『封神演義』より4つの場面をモチーフにした装飾があると紹介した。執筆当時は封神に関する知識が皆無であったため、これらはどの場面なのか、また誰が置かれているのか判別することができなかった。

 

先日大変ありがたいことに三国志仲間の方より、考察を踏まえどの場面なのか、また誰なのかご教授いただいた。改めてお礼を申し上げます、ありがとうございました。

 

さて今回はその4つの場面について順に見ていきたい。

 

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1.黒牛(五色神牛)に騎乗することから、中央左側の槍を振る人物は武成王 黄飛虎。彼と相対する人物は三眼で麒麟(墨麒麟)に跨ることから聞仲である。赤い馬に跨る人物は両手に剣を持つ姿で表されていることから、を手にする黄天化*1であろう。黄飛虎の頭上および左右に置かれる人物は殷・周に属する兵士か?

黄飛虎と聞仲が一騎打ちする場面は作中に描かれることがないが、第31回「聞太師驅兵追襲」~32回「黃天化潼關會父」を題材にした場面だと考える。

 

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2.)中央には四不相に跨り打神鞭を揮う姜子牙が、その右上部には風火輪に乗り乾坤圏と火尖鎗を手にする哪吒。その下には三眼で槍状の武器*2を手にする楊戩の三人が置かれる。彼らと対峙する赤い馬に騎乗し、肌が青く槍で襲う人物はおそらく殷郊(兄)であろう。場面は65回「殷郊岐山受犁鋤」。殷郊は第63回「申公豹說反殷郊」より三面六臂の姿になり以降その容貌で作中登場するが、ここでは制作上の関係によるものか変形していない姿で現されている。

 

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3.中央左の赤馬に乗る女性は鄧嬋玉であろう。また先の楊戩像とこの場面に登場する白馬の人物を比較すると、容姿や馬具などが非常に類似することから二眼ではあるが楊戩だと思われる。よってこの場面は第53回「鄧九公奉敕西征」であろう。この回で楊戩とともに鄧嬋玉と相対するのは龍鬚虎であるため、中央上部の黄色い馬に跨る人物は龍鬚虎であろう。

【追記】

龍鬚虎は馬に騎乗しておらず、そもそも「人」形ではない、とご教授いただきました。そのため現段階ではこの場面と人物は誤っているかも、です。

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比較するとこんな感じ…

 

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4.全体的にヒントとなる人物の特徴や武器などないため、こちらも推測となるが、左の汗血馬に乗る人物には鬚髯がなく若々しい容姿のため黄天祥だと思われる。彼が活躍するシーンは限られており、全体像よりおそらくこの場面は第73回「青龍關飛虎折兵」であろう。よって中央の白馬の人物が青龍関を守護する大将 丘引、彼の後ろの建造物は青龍関。黄天祥と共に槍で丘引を襲う人物が鄧九公。また中央と右端に立つ人物は、丘引と共に関を護る孫宝と余生であろう。

 

 

4年前から抱いていた長年のモヤモヤとした疑問がようやく晴れたので、やっと吹っ切れることができました。横浜「関帝廟」をはじめとする寺廟や道観などの屋根には、このような剪瓷雕が施されているので、どの場面をあらわしているのか、誰が置かれているのか等々…新たな発見があるかもしれないので、注視していきたいです。

 

 

 

*1:双錘が本来の武器であるが、剣に置き換えられたものと思われる

*2:穂先が欠落しているため三尖刀だったのかは不明